マチは猫の両脇に手を当てて持ち上げた。
椅子に座って膝の上に猫を乗せる。
猫の頭を撫でると、ゴロゴロ首を鳴らしてゆっくり目を閉じた。

「また残してる。お腹の具合悪いの?」

マチが台所の下に目をやると、皿のキャットフードが山盛りのままだった。

(アマはぐっすり眠っているみたいね)

テーブルの角に、アマのコップと睡眠薬の空袋が置いてあった。
アマとマチは睡眠薬を常備していた。
時間が空いた時に能率良く眠らなければ体が持たないからだ。
昨夜マチも睡眠薬を飲もうとしたが、今日寝過ごしたら大変なので自力で寝ていた。

ダイニングの隣りはアマの部屋だ。
マチの耳までアマの寝息が聞こえてきそうである。
パソコンのマウスを動かすと、スクリーンセーバーが消えた。
電源が入ってるついでにインターネットに接続した。ニュースと天気をチェックする。

(メールは見なくてもいいか。どうせ受信してないわね)

マチとアマは一台のパソコンを共有していた。
各自専用のメールアドレスを持っていたが、滅多に開くことはなかった。
携帯電話で用が足りるからだ。
特に重要なメールが届くわけでは無いので、二人共パスワードをかけていなかった。

突然、マチの正面に見えていたドアが開いた。

パジャマ姿のアマと目が合う。
大きい目がトロンとしていて、まだまだ眠れそうな感じだ。

「暗い部屋でパソコン?……目に悪いわよ」

そう言うと、アマはダイニングのベランダまで摺り足で行き、カーテンを開けた。
一気に昼の光がなだれこむ。

「お、おはよう、今トースト焼くね」

マチがアマに言うと、素早くパソコンの電源を切って立ち上がった。