前野が手で追い払うジェスチャーをする。涼は携帯をポケットにしまって歩き出した。
「オメエの予定は?」
「ファミレスで公務員試験の勉強して、夕方からバイトだ」
「古本屋の店員か。6時から11時?」
「そう、時給800円。最近50円下がった。2軒隣りにBOOKOFFが建って、うちは閑古鳥が鳴いている」
「ほ~う、それは悲惨。っていうことは、今日の儲けは20万とんで4千円! 店員辞めて、どんどん携帯持ってこい」
「あのなあ~、結構くたびれるんだぜ……人の携帯盗るのは」
「罪悪感に押し潰されそうになるってかあ? 外国では盗られる奴が悪いと言われんだぜ。管理を怠ってる間抜けはすられて当然! あっ、俺こっちだから。また会おうぜ」
そう言うと、涼は細い横道に消えていった。
3年半前、前野は東京の国立大学に入学して上京した。偏差値的に可も不可もない普通の大学だ。
同じ学科で涼と知り合い親しくなる。
しかし、2年生になると涼が突然大学を辞めた。
卒業してサラリーマンになっても、稼げる額はしれてるという理由からだった。
金への執着が強い涼はホストを始めた。
しばらくすると、同僚に紹介された闇金融の世界に足を踏み入れた。
他人の金を利用して非合法に儲ける業界。