男は封筒を内ポケットにしまい、ラジオのボリュームを下げた。

「犯人は交際相手?! 空き巣による犯行?! それとも狂信的なファンの仕業か?! いろんな憶測が飛び交っている。世間を一層暗くしちまったな。容疑者は犯行後、ダイニングルームでのうのうとみかんを食べていたんだと。……どうやって、指紋をコップにつけさせたんだ?」

「ボイスチェンジャーを使って電話したの。声質を変えることができる機器ね。『家にあがって猫の水を捨てといて、お願い』って言ってね。人気番組のおかげでアマだと信じきっていたわ。それで、猫の飲み水の入れ物をアマのコーヒーカップと取り換えておいたってわけ」

「なるほど……ワイドショー見たぜ。あんた、インタビューで号泣してたな」

「アマがあんな事になるなんて……その時私が代わりにいれば……クックックッ」

女が再現して不適に笑った。

「ったく、よくやるぜ。いい役者になれるよ。世間からの同情票も得られたし、当分仕事は無くならないな」

「アマったら、いきなり解散してソロになるなんて言い出して。私がなだめようとしたら、『マチが汚いから私もゴールデンの仕事が増えないのよ。福ちゃんは偉そうにダメ出しばっかり。2人とも足手まとい!』って暴言吐いたわ。世の男からちやほやされるからって、天狗になっちゃって……」

女が愚痴っぽくしゃべった。