「べつに。一日じゅう家で休むつもりよ。福ちゃんからもゆっくり休んどいてって言われたし」

そう言うと、アマは口にコーヒーカップを近づけた。

「そろそろ、外出の準備するわ」

そう言って、マチは洗面所に行った。

今日は一段と瞼が腫れあがっている。
口紅を塗るとタラコ唇が一層強調された。
人を食らう冷徹な化物のような形相だ。

マチは、アマが食べ終わった食器を洗い、準備を済まして外に出た。
どっと溜息を吐く。
背中にはじっとり汗をかいていた。

(大丈夫、きっと成功する)

玄関の前で深呼吸をすると、駅に向かって小走りをした。


しばらく進むと、人通りの少ない道路にワゴン車一台が路駐していた。
マチは車の側面に近づき、ドアをスライドさせて乗りこんだ。

「OKよ。アマは家で一人だわ」

マチが数人に声を掛けた。
ワゴンに乗っているのはテレビスタッフだった。

「よっしゃ! 今日は快晴で最高!!」

マネージャーの福ちゃんは上機嫌だ。

「家の中を撮るんだから天気関係ないっしょ!」

即座にディレクターが突っ込む。

「これ、今日の台本なので目を通しておいて下さい」

ADがマチに番組の台本を渡した。