ふいに、真後ろから低い声で呼び掛けられた。

前野の体が弾かれたようにビクッと反応する。
だが、聞こえないフリをして歩幅を大きくした。

「止まれって言ってるだろ。携帯盗ったの、オメエだろ!」

前野は肩を掴まれた。両足が凍りつく。背中の至る所にある汗腺から汗が一気に噴き出した。

前野は肩を引っ張られて強引に後ろを振り向かされた。