「タレントの個人情報は結構出回ってるからな。それに当人が事務所や弁護士やらでガチガチにガードされてるから、はめにくいんだ。仮に詐欺が成功しても被害のニュースが大きく報じられたら、世の中の気が引きしまっちまう。ぶっちゃけタレント物は一般人より使えねーな」

「そ、そうか……」

「なんだ、まさかタレントのブツをがめたのか?」

「いや、ただ聞いてみただけだ……簡単に芸能人と出会えるわけないだろ」

前野は涼に図星を突かれ、声が上擦らないように喉の奥を力ませた。

「それもそうだな。まっ、今度暇な時飲みに行こうぜ、じゃあな」

電話を切ると、前野は大きく深呼吸をした。

(本屋に来た女がアマだったとは、驚きだ。確かに華奢だったけど、変装であそこまでオーラを隠せるとは……この携帯どうするか? 一万で売るのは惜しいし、かといって持っていてもどうにもならないだろうな……)

前野はアマの携帯を眺めた。薄桃色のボディが艶のある光沢を放っている。

時計を見ると0時半をまわっていた。
前野は、今日がアチトークの日であることを思い出してチャンネルを換えた。

3人のタレントが赤いソファーに座って正面を向いている。
真ん中に、ギョロ目で河童のように口が尖った男が座っていた。若手のピン芸人「ホーホケキョウ」だ。
ホーホケキョウの左横にはアマが、右横にはマチが座っている。
アマとマチはメイドのような衣装を着ていた。デザインとサイズはほぼ同一に見えるが色は異なり、アマが白でマチは黒だ。
髪型は双方ストレートのセミロングで合わせている。
一致している所が多い分、顔のギャップがより浮き彫りになっていた。